第129回例会のお知らせ

日仏美術学会第129回例会のお知らせ

日仏美術学会第129回例会を下記のように開催いたします。皆様奮ってご参加下さい。

日時:2013年12月21日(土) 14時30分-17時15分
場所:京都大学文学部 第6講義室 (京都市左京区吉田本町)

チラシ(PDF)

テーマ:「文学と庭園、写真と演劇――交差する芸術」 

14:30-15:10 
津森圭一(上智大学グローバル教育センター)
プルーストと庭園の詩学-読解の対象としての庭

要旨:
 『失われた時を求めて』では、コンブレーのスワン家の庭園、シャン=ゼリゼ公園、貴族の邸宅の庭などの「庭園」jardinが舞台となり、小説の筋の運びを決定する役割を果たしている。これら小説中に登場する庭園は、フランス式整形庭園、英国式風景庭園、日本庭園など、各様式の性格が混在したものである。この多彩な庭園が庭園の鑑賞者に読解を促しているとすれば、テクストに描写される庭園も特定の意味を担い、読者がそれらをいかに読み解くかが問題となる。芸術が模倣する対象となるのが自然の「風景」であるとすれば、庭園の人工的な「風景」は自然が芸術を模倣した表象である。両者の区別がプルースト作品においていかに機能しているかを考察することで、プルースト的「庭園」が、主人公にとって、芸術創造のための契機を授けられる場として機能していることがわかる。

 15:20-16:00
長野順子(神戸大学大学院人文学研究科)
セルフポートレートにおける演劇性-クロード・カーンと前衛劇との交差から

要旨:
 シュルレアリストの女性写真家・作家として近年注目されはじめたクロード・カーンは、セルフポートレートにおける鏡像や多重像の使用、異性装・仮装への傾向により、主にジェンダーや主体の同一性転覆という視点から考察されてきた。こうしたフェミニズム的・ポストモダン的なアプローチに対して、カーンの短い演劇活動に焦点を当てながら、そのセルフポートレートを「演劇性」という面から解釈し直すことが、本発表の目的である。
 1920年代に盛んになった前衛劇場のTheatre esoteriqueやLe Plateauに、カーンは俳優や機関誌の寄稿者として、彼女のパートナーM.ムーアはポスター等のイラストレーターとして関わった。そこで交流した劇場人にはエキゾティックな歌や踊りを提供した日本人数人も含まれる。この時期の彼女たちの舞台への関与の仕方とともに、カーンのセルフポートレートや文学テクストにおける「演出」や「パフォーマンス」の要素について明らかにしたい。

 16:15-17:15 全体討論  
◇コメンテータ 和田章男(大阪大学大学院文学研究科)
◇コーディネータと司会 吉田典子(神戸大学大学院国際文化学研究科)

*18時より、近くの居酒屋で懇親会をします。どうぞご参加下さい。