カトリーヌ・ペリエ=ディーテラン講演会のお知らせ

講演会のお知らせ

フランス事務所と共催で日仏美術学会講演会が以下のように日仏会館で行われます。
皆様奮ってご参加下さいますようご案内申し上げます。

フランドル油彩技法の伝統と革新:
ルーベンスの影響とフランスの画家による展開

◆ 日 時:2013年12月15日(日) 14:00 – 18:00
◆ 場 所:日仏会館1階ホール
◆ 主 催:日仏美術学会、日仏会館フランス事務所
◆ 協 賛:公益財団法人西洋美術振興財団 、公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
◆ 後 援:ベルギー大使館 
◆ 同時通訳あり(同時通訳機器のデポジットとして1,000円お預かりしますが、お帰りの際にご返却します)
◆ 参加費:無料◆ 講演会参加者お一人につき一枚当日受付にて、ポーラ美術館開催「ルノワール礼讃」展(2013年12月1日より開催)の入場無料招待券を差し上げます。
◆ 要事前予約 予約先:日仏美術学会事務局

[プログラム]
14時00分-14時15分 開会の挨拶 趣旨説明

第一部   司会:平岡 洋子 (明治学院大学非常勤講師)
14時15分-15時30分 カトリーヌ・ペリエ=ディーテラン
「ヨーロッパ絵画における立体感とイリュージョニスム-ファン・エイクからヴァトーまで、
ルーベンスの技法と17、18世紀の画家たちへの影響をめぐって」

イリュージョニスティックな表現の絵画技法。美術作品の調査から得られたもの。
 イリュージョニスティックな表現に使われた絵画技法について語るについて、それぞれのやり方で現 実をイリュージョニスティックに再現するため、さまざまな画家と接し、その絵画技法を吸収していっ たヨーロッパの画家たちの交錯した歩みを、このテーマから見て示したいと思う。
 先ず導入部として、短く、立体感の観念について、そして15世紀以前の挿絵について触れ、続いて絵 画の偉大な天才たちの創造的な道程を、すなわちヤン・ファン・エイクからルーベンス、ヴァン・ダイ ク、レンブラント、ヴェラスケスを経てアントワーヌ・ヴァトーとフランソワ・ブーシェに至るまでの 絵画技法を見ていく。
 油彩技法の可能性を開発した最初の素晴らしい成果がヤン・ファン・エイクと共にあるとするならば、 その絶頂期は、北方油彩画の歴史においてその影響がもっとも広範囲に及んだ「不透明-透明感」効果 の階調を作り出したピーター・ポール・ルーベンスと共にあるといえるだろう。ルーベンス自身、ヴェ ネツィア派、特にティツィアーノの影響を受け、17、18世紀の画家たち-南ネーデルラント、オランダ、 スペイン、フランスの画家たち-優れた後継の画家たちに決定的な影響を与えることとなる。本講演で は、これらの画家の美的渇望に応えるそれぞれの画家の手法を明らかにしようと試みることで、彼らの 作品がつくられていった吸収作用と創造の絶え間ない動きにおける画家たちの間の対話の本質的な貢献 を理解していただけたらと考える。
 また、研究者の方々美術愛好家の方々に、調査という条件の下、制作技法と様式が密接に結びついた 絵画面から読み取った視覚的客観的なデータをお示ししたい。
 近年、科学的調査方法の寄与のおかげで、この領域は大きな進展を見ている。

第二部   司会:三浦 篤 (東京大学教授)

15時45分-16時45分 内呂博之(ポーラ美術館学芸員)
「ルノワールの色彩と技法-絵画技法のフランドル伝統とルノワールによる革新」

 光を描きとどめようとする印象主義の手法に限界を感じたルノワールは、1881-1882年のイタリア旅行を経て、厳格な輪郭線と量感の表現による古典的様式、いわゆる「アングル様式」に向かう。彼は、人体描写に際しては、シルバーホワイトによる重厚な下塗りの上に、赤や青を比較的細くやわらかい筆で薄く繊細に塗り重ねることによって、量感や明暗を表現する方法を見出す。この「グラッシ(グレーズ)」と呼ばれる伝統技法にもとづく手法によって、彼の描いた女性の肌は油彩画特有の透明感のあるマティエール(画肌)を呈し、釉薬を施した磁器のようなやわらかな輝きを湛えている。
 アングル様式を脱した1890年代以降、ルノワールはのびやかな筆致を特徴とした、明るくあざやかな、そして透明感にあふれる画風を追究するようになる。とりわけ裸婦をモティーフとした作品では、補色関係にある赤と緑の透明色を溶き油で薄く溶き、彩度を抑えて描く手法を採り入れており、そのやわらかな透明色は、部分的にやや厚く施された不透明色や純色との絶妙な均衡によって、豊かな色彩と変化に富んだマティエールを画面にもたらした。
 本発表では、ポーラ美術館が収蔵する、ルノワールの1880年代から1910年代までの油彩画15点を通して、彼の油彩画の変遷とその技法的な特質を明らかにしたい。

17時00分-17時30分 全体討議

17時30分-18時00分 レセプション

講演会終了後、ホール横のロビーでベルギー大使館の提供によりパーティーが開かれます。無料でご参加できます。


講演者プロフィール
カトリーヌ・ペリエ=ディーテラン  
ブリュッセル自由大学名誉教授、ベルギー王立アカデミー会員。フランスの美術品修復学院の非常勤講師、ラ・カンブルの国 立視覚芸術高等学院講師、ヨーロッパ各地の大学の招請教授。国際美術館文化財保存委員会顧問代表、国際保存修復諮問機関の 顧問。15、16、17世紀の西洋絵画とフランドル絵画、ブラバント地方の祭壇画、美術作品の科学調査の手法について、絵画技 法について、文化財保存と修復の問題についての著書多数。 参照:Thierry Bouts : L’oeuvre complet (Fonds Mercator , 2005) Le grand atelier : Chemins de l’art en Europe (Ve-XVIIIe siecle) (Actes Sud, 2007) 

内呂博之(うちろ ひろゆき)  
1972年生。2001年、東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程文化財保存学専攻(保存修復油画)中退後、ポーラ美術館 設立準備室に勤務。現在、公益財団法人ポーラ美術振興財団ポーラ美術館学芸員。専門は保存修復、絵画技法史、日本近代絵画 史。 担当した展覧会に、「コレクションにみる子どもの世界 フジタ、ピカソを中心に」(ポーラ美術館、2004-2005年)、 「佐伯祐三とフランス」(ポーラ美術館、2008-2009年)「レオナール・フジタ 私のパリ、私のアトリエ」(ポーラ美術館、 2011~2012年)、「レオナール・フジタ ポーラ美術館コレクションを中心に」(Bunkamura ザ・ミュージアム、2013年)など。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《髪かざり》
1888年、油彩/カンヴァス、81.4×57.3cm、ポーラ美術館

ピエール=オーギュスト・ルノワール《レースの帽子の少女》
1891年、油彩/カンヴァス、55.1×46.0cm、ポーラ美術館

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