1920~30年代の美術史家と美術批評家①
日仏美術学会 ワークショップのご案内
日仏美術学会のワークショップが以下のように行われます。奮ってご参加下さい。
◆日時: 2008年12月20日(土)13時30分~17時
◆場所: 日仏会館 501号室
「1920~30年代の美術史家と美術批評家 ~フランス美術史編纂の歴史研究試論~」
大戦間期のフランスは、前世紀末に自立したフランス美術史学の再編成期にあたります。各種美術館、教育研究施設の再編が図られ、多様な政治的傾向をもつ美術行政官、美術史家、美術批評家が、それぞれに個性的な複数の美術史を構想していたといえましょう。このワークショップでは、混沌としたこの時代の美術界を生きた美術史家や美術批評家にスポットを当て、今日に継承される(あるいは継承され損なった)フランス美術史のあり方を多角的に検討し、参加者とともに議論したいと思います。
○藤原貞朗(茨城大学)
「美術史概説叢書にみる美術史家の役割 ~レオ、フォシヨン、ジャモなど~」
1920~30年代には複数の美術史概説叢書が公刊されている。それぞれの叢書は編者や執筆者の社会的・政治的立場によって特徴的な美術史を構想している。その特徴を読み取りながら、この時期にどのような(複数の)美術史が構想され、それをどのような美術史家が担っていたのかについて考える。
○飛嶋隆信(東京農工大学)
「両大戦間期の芸術論における起源のイメージ」
ル・コルビュジェやアメデ・オザンファンらのテクストを軸に、独・伊など諸外国の例(特にイタリアにおけるマリオ・シローニなどの)も考慮に入れつつ、当時の芸術家・批評家・美術史家らによる、古代と現代とを連繋させる思考のあり方を検討する。
○吉田紀子(中央大学)
「醜い裸体主義 ~現代芸術家連盟批判に見る伝統主義とその背景~」
1929年、装飾芸術家協会に所属していた建築家・装飾家のうち、旧来の装飾芸術の概念から距離を置き、より現代的な傾向を標榜する者たちが分離して現代芸術家連盟を結成した。当時、現代芸術家連盟に対して「醜い裸体主義(ヌーディム)」といった辛辣な批判が向けられる一方で、1934年にはこれに反駁するマニフェストが同連盟によって発表されるなど、フランス装飾芸術に関する批評はおおむね二分された。本発表では、この論争を一つの指標としながら、1920~30年代における装飾芸術をめぐる歴史観の展開を整理し把握することを目指す。
○阿部成樹(山形大学)
「フォシヨンとクローバー ~「超有機体」論をめぐって~」
アメリカの人類学者A. クローバー(1876-1960)の様式観や文化観との比較で、フォシヨンの特質を考える。土器の形態分類といった、ある意味で美術史に近い研究姿勢を持っていたクローバーは、著書『様式と文明』に見られるようにフォシヨンのそれと重なりあう問題意識を感じさせる。そのクローバーの文化観を、「超有機体 superorganic」というキーワードの中に探り、フォシヨンによる形態の生命観、文化観との比較を試みたい。